【曾国藩の手紙】
清末、否、支那歴史上にも
類稀【たぐいまれ】な偉人曾国藩も、
長髪賊との戦陣中から
その子紀鴻【きこう】に書を与えて、
大抵は皆子孫が大官
たらんこと望むものであるが、
父はお前が大官に
なることを願いはしない。
ただ読書明理の君子となって欲しい。
勤倹自ら持し、労苦に習い、
順境にも逆境にも変わりなく
処【しょ】してゆくのは、
君子である云々と誨【おし】えている。
読書明理とはもちろん
単なる知識の雑獲ではない。
聖賢の書を読んで人生の道理を
明らかにすることである。