【人物研究と小人奸物 ①】
真の人物研究は、
必ずしも偉大な英雄哲人に
限るものではない。
いかにも英雄哲人は
我々の卑陋【ひろう】さを痛く刺激して、
感奮興起させるに
最も強烈な力を有するが、
しかし我々はそれに浮かされて、
いたずらに感傷に流れ、
興奮に止まってはならぬ。
あくまでも厳粛に我々が
気づかぬさまざまな生活を会得し、
ともすれば閑却し易い人生の
深い本質的な問題に触れて、
自己の人格識見を完成してゆくところに
最も高貴な意義があるのである。