【優遊自適】
最初に漢民族が困ったのは、
黄河の氾濫【はんらん】である。
つまり黄河の水処理に非常に苦しんだ。
だから漢民族の始まりは、
ほとんど黄河の治水の記録と言うていい。
それで、いろいろ水と戦ったのだが、
何しろあの何千キロという河ですから、
紆余【うよ】曲折して、ある所に治水工事をやると、
水はとんでもない所へ転じて、
思わざる所に大変な災害を引き起こす。
苦情が絶えない。
そこで長い間、治水に苦しんで到達した結論は、
結局「水に抵抗しない」ということであった。
水に抵抗するとその反動がどこへ行くやらわからん。
水を無抵抗にする。
すなわち水を自由に遊ばせる。
これが結論で、そこで水をゆっくりと、
無抵抗の状態で自ずからに行かしめ、
これを「自適【じてき】」と言うた。
適という字は行くという字。
思うままに、つまり無抵抗に
行く姿を自適という。
抵抗がないから自然に落ち着いて、
ゆったりと自ずからにして行く。
これが「優遊自適【ゆうゆうじてき】」であります。