【父と子 ①】
道義心の最も根源的な、最も純粋な姿は、
敬重(けいちょう)されたいという衝動である。
又(また)こういう衝動からまず敬重の唯一の
可能性対象である道義的なもの、
即ち、正・善・真・克己という認識が生ずることである。
子供の場合には、この衝動はまず彼が最も敬重する人から
敬重してもらいたいという衝動として現れる。
そうして愛は決して利己心より生ずるものではないという証拠には、
この衝動は、慈愛を以て常に眼前に在る母に対してよりも、
不在がちで、直接慈愛者として現れない、
もっと厳格な父に対して、
一般に遥(はる)かに強く且(か)つ決定的に向けられる。