【忠 厚】
忠厚(ちゅうこう)という文字は
非常によく使われる大事な文字であります。
人間は薄くてはいかん。味も薄くてはいかんが、
人間の内容というものは、特に薄くてはいかん。
できるだけ厚くなければならん。
しかもその人間の内容の中でも、
特に大事なのは情が厚いということであります。
「忠」というのは、われわれの理想・目的に従って
努力することを言うのです。その努力、
つまり真面目(まじめ)に行おうという努力、
忠は非常にけっこうでありますが、そのために、
往々にして人間は一種の功利主義になっている。
目的のためには犠牲を省みんということで、
人情味・人間味がなくなる、つまり軽薄になる。
それでは人心がつかん。
やっぱり大功を成就する者というのは、
人を使わなければならんから、忠厚である、
忠にしてかつ厚である。何事によらず厚みがある。
特に情において厚みがあります。