【政治の使命】
国家の最も明確な相違は、
人材(現代用語で言えばエリート the elite)
の差に外(ほか)ならない。
人材は徳を体とし、才を用とする。
才徳双全(そうぜん)は聖人、
才徳兼亡(けんぼう)は愚人、
徳・才より勝るゝは君子、才・徳より勝るゝを
小人(しょうじん)と謂(い)う。
如何(いか)にして聖人・君子
即ち人材を養うかが教学であり、
その人材を知り、之を用い、
之に任すのが政治である。
治者に人材無く、
治者が時代人心の要望に応ずる能力を失い、
職責を怠(おこた)り、享楽に耽溺(たんでき)し、
賢者を妬忌(とき)し、
私党を結んで相争うようになれば、
必ず国家は衰亡を招く。
凡(およ)そ生は天地の大徳であり、
人は其の最も霊なる者であるが、
衆人は教養を待たねば
その霊なる所以(ゆえん)を覚らずして堕落する。
衆人を導いて
道徳文明に高めてゆくのが政治の使命である。