【うまい味】
甘い・渋い・苦いは畢竟(ひっきょう)偏味である。
その至極(しごく)は、
もはや甘いとも渋いとも苦いとも、
何とも言えないうまい味である。
たとえば老子にはそれを「無味」という。
無味とは「味無い」ではない。
「偏味で無い」ことである。
何とも言えない、うまい味のことである。
これを別に又(また)「淡(たん)」という。
淡いとは味が薄い、味無いということではない。
「君子の交(まじわり)は
淡として水の若(ごと)し―荘子」
とは水の様に味が薄いということではない。
水の様に何とも言えない味、
それこそ無の味ということである。