【陸賈の諫言】
私の愛読書の一に
『陸賈(りくか)新語』がある。
陸賈という人物がそもそも快男児である。
野人的英雄・漢の高祖(こうそ)が
天下平定の大業に成功して大得意の時、
彼は進んで書を講じようとした。
高祖は馬鹿にして、
乃公(おれ)は馬上・天下を得た。
本など知ったことか!
すごすご引退るかと思いの外、
彼は毅然(きぜん)として反論した。
馬上・天下を得るも、
馬上・天下を治めることはできません。
湯王・武王は逆取して順守したものです。
文武両用することが長久の術です。
もし秦が先聖に法(のっと)り、
仁義の政を行ったならば、
どうして天下が陛下のものになったでしょうか!
これには流石の高祖もぎゃふんと参った。
それでは試みにどうして秦が天下を失い、
俺が天下を得たかの理由を
明らかにしてくれと望まれて、
彼の著したものが
『陸賈新語』十二篇であるといわれる。