安岡正篤一日一言 2019年04月02日(火曜日)

【人間喪失の時代】

 ひとかどの人で論語の一冊、
 観音経の一冊を書写しなかった人はいない。
 生活の中に『論語』を持ち、
 法華経を持ち、観音経を持ち、
 あるいは中江藤樹(なかえとうじゅ)を持ち、
 山鹿素行(やまがそこう)を持たざる者はなかった。
 それはその人の中に、その生活の中に、
 事業の中に哲学や信仰があった。
 学問求道があった。
 これが国を興し、人を救った。
 それが今日なくなった。
 こういうところに現代の浅ましい人間喪失がある。
 人間喪失とは、魂の喪失、心の喪失である。
 文明国の中でそれが最もはなはだしいものが
 今日の日本ではないか。