【咳唾みな珠なり】
怨むべく、怒るべく、
弁ずべく、訴うべく、
喜ぶべく、愕【おどろ】くべきの際に当り、
其の気甚だ平らかなるは、
是れ多大の涵養。
(呻吟語・存心)
怨むべくして怨み
怒るべくして怒る、
弁ずべくして弁じ
訴うべくして訴う、
喜ぶべくして喜び
愕くべくして愕くというのは、
よほど涵養した人ですね。
それがまたそれぞれに味がある。
非常にできた人が
怒ったというのはいいものです。
また泣いたというのもいいものです。
つまらぬ人間が怒ると
いかにも見苦しい。
信用のないものが泣くと
これはまた情けない。
同じ喜怒哀楽でもやっぱり
人物によってみな違います。
おもしろいもので、
人物ができてくると、
「咳唾【かいだ】みな珠【たま】なり」
といって何でもいいものです。
人間はそうならなければいけません。