【独行道 ②】
一、世々【よよ】の道に背くことなし。
ただ猫の眼の如く移り変る風俗習慣の
流のなかに、萍【うきぐさ】の様に漂うて、
新を真と心得て居る者は浅露である。
達人は万古の心を思う。
二、よろづ依怙【えこ】の心なし。
三、身に楽をたくまず。
四、一生の間欲心【よくしん】なし。
五、我事【わがこと】に於て後悔せず。
六、善悪につき他を妬【ねた】まず。
七、何【いずれ】の道にも別れを悲しまず。
八、自他ともに恨みかこつ心なし。
九、恋慕【れんぼ】の思いなし。