安岡正篤一日一言 2018年08月05日(日曜日)

【『小学』を学ぶ】

 私の好きな大家の一人に章楓山という人がおりますが、
 明代の碩学で、王陽明とほど同時代に生きた人でありますが、
 ある時新進の進士が訪ねて来て、
 「私も進士の試験に及第しましたが、
 これから一つどういうふうに勉強すればよろしいのでしょうか、
 ご教示願いたい」と頼んだ。
 章楓山はこれに答えて
 「何といっても『小学』をやることですね」といった。
 いわれた進士は内心甚だ面白くない。
 進士の試験に及第した自分に『小学』をやれとは、
 人を馬鹿にするにもほどがあるというわけであります。
 そうして家に帰り、
 何となく『小学』を手にとって読んでみたところが、
 誠にひしひしと身に迫るものがある。
 そこで懸命に『小学』を勉強して、再び章楓山を訪れた。
 するとろくろく挨拶も終わらぬうちに章楓山がいった、
 「だいぶ『小学』を勉強しましたね」。
 びっくりして「どうしてわかりますか」と訊ねたところ、
 「いや、言語・応対の間に自からあらわれておりますよ」
 と答えたということであります。いい話です。