安岡正篤一日一言 2017年12月05日(火曜日)

【偉大な二つの魂】
 古来、英雄とか偉人とか
 いわれる偉大なる人を見ますと、
 二つの一見矛盾するがごとき二者を
 小人や俗人のとうてい
 解すべからざる程度に持っています。

 我々の先人で申すならば、
 西郷南洲という人。

 表面から見ると非常な功名の士、
 すなわち陽性の人に見えますけれども、

 実はデリケートな情操を持った人でありまして、
 あのような革命的活動とともに
 その半面において深刻に隠遁的な志を
 抱いて悩んでおった人であります。

 その前の幕府の例を見れば、
 井伊直弼という人がやはりそうであります。

 ちょっと、これも表面から窺【うかが】うと
 いかにも残酷な鉄血政治家
 という趣きがありますけれども、

 一度深く立ち入って観察いたしますと、
 茶を嗜【たしな】み、和歌を詠じ、
 禅に参じ、道を好む、
 非常に優しくゆかしい
 内面的な人格があります。

 それが自然にいうにいえない
 一個の魅力ある風格となって、
 今日多くの心ある人を
 惹きつけているゆえんであります。

 普通の人間はつまり
 一見相矛盾するがごとき
 二つの魂を統一して
 大きく抱懐することができない。

 そのいずれかに軽々しく偏して、
 意気地のない、
 あるいは杜撰【ずさん】な生活を
 しているものであります。