安岡正篤一日一言 2017年07月16日(日曜日)

【貧苦の意味】

 貧苦はかえって人間の骨力【こつりき】を養い、
人間をして動物的な苦しさに堪えかねて
 真の精神的な境地を渇求し、邁往せしめる。
 故に孟子も、
「天の将【まさ】に大任を是の人に降さんとするや、
必ず先ず其【そ】の心志を苦め、其の筋骨を労し、
其の体膚を饑えしめ、其の身を空乏にし、
行には其の爲す所を払乱【ふつらん】す。
心を動かし、性を忍び、其の能くせざる所を
 曾益【そうえき】する所以なり」
(告子下篇)
〔天が今にも是の人に大任を授けようとする時、
必ず心を苦しめ体を酷使し飢えさせ、
 ぎりぎりまで苦しめ、
為そうとすることはことごとく実現させず、
行いも心にもとるようにしむけるのである。
だから心を絶えずおそれしめ、
 本来の性をかたく堅持させ、
これまでできないと思っていたことを
 実現させようとする意図なのである〕
 と言っている。
 経済的恩恵は道徳的教育が根本になっておって、
はじめてよくその子を啓沃【けいよく】する。